最終更新日:2023年7月20日
ギオン管症候群 (ギヨン管症候群、尺骨神経管症候群)
ギオン管症候群とは
ギオン管症候群は、尺骨神経障害をきたす疾患の1つで、ギオン管で尺骨神経が圧迫、絞扼(しめつけ)、あるいは牽引されることにより障害をきたしている病態です。
支配領域のしびれ、知覚障害、筋力低下などが症状として起こります。
ギオン管
ギオン管は、手掌尺側にある尺骨神経、尺骨動静脈が通過するトンネルです。
豆状骨の橈側、有鈎骨鈎の尺側の間で屈筋支帯と豆鈎靭帯が底部となり掌側手根靱帯の遠位部と短掌筋の近位部に囲まれてできる掌側のトンネルで内部を尺骨神経が通過し、小指と環指尺側を支配しています。
(1861年にGuyonが報告しています。)
原因
分岐した尺骨神経深枝が小指球基部を潜っていきギオン管を通過する際に障害が生じている病態です。
様々な病態が報告されています。
- ギオン管内に発生した腫瘍(ガングリオン、神経鞘腫、脂肪腫)による神経圧迫
- 自転車運転時の負担(体重支える際に、ハンドルグリップがギオン管を圧迫している。)
- 職業によるギオン管への負担(ハンマー、包丁の長時間使用。特にピザ職人、そば職人などに多くみられる。)
- スポーツによるギオン管への負担(腕立て伏せを繰り返す、野球のキャッチャーなどに多い。)
- 有鈎骨鈎骨折によるギオン管への影響
その他、原因不明の場合もしばしば認めます。
症状
症状は肘部管症候群とほぼ共通ですが、肘部管症候群とは知覚障害、しびれが生じる部位が異なります。
手背尺側の感覚神経(尺骨神経背側枝)はギオン管の手前で分岐しているためギオン管症候群では、手背側の知覚障害は発生しません。
画像出典:日本整形外科学会 肘部管症候群
診断
母指球以外の手内筋の萎縮、かぎ爪変形があれば診断可能です。
- Tinelサイン:ギオン管部を軽く叩くと環指外側、小指にしびれが走ります。
- 筋力低下:外転、環指、小指屈筋、握力低下、細かい作業が困難になります。
- レントゲン:有鈎骨鈎骨折、豆状骨を含めた手根骨周囲の異常をチェックします。
- エコー検査、MRI:神経の圧迫、ガングリオンなどの確認します。
手のしびれがメイン症状となることが多く、頚椎領域、肘部管症候群はチェックされますがギオン管症候群は見逃されることも多いです。
治療
肘部管症候群の治療に準じて保存的治療、外科的治療を行います。
外部からの圧迫(打撲、繰り返し圧迫)が原因の場合
安静で治癒する可能性が高いです。
キャッチャーミットの厚さを増やすなど工夫をしてみるとよいでしょう。
ギオン管内で神経を圧迫するものがある場合
ガングリオン、有鈎骨鈎骨折などが該当します。
手術が必要となる可能性が高いです。
当院でできること
- 身体所見、レントゲン、エコー検査からの診断
- 投薬、注射、補装具を使用した保存的治療
- 専門スタッフによるリハビリテーション
- 手術術後の回復リハビリテーション
診断から治療、その後のリハビリまで患者さんの症状に合わせて対応しておりますので、ご相談下さい。
当院でできないこと
当院では、MRIでの精査、神経伝導速度検査、手術加療はできません。
必要であれば専門外来に紹介させていただきます。
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