最終更新日:2021年8月4日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)③ 検査その2

前回、検査の概要をお話しました。(コラムはこちら)

かなり大雑把な話だったのと、それぞれの検査の詳細に関してはお伝え出来なかったので、今回はすこし踏み込んでお伝えします。

PCR検査にも3種類ある

細かいところをお話すると、PCR検査も、3種類ほどあって、元々のPCR検査と言われているリアルタイムRT-PCR検査がPCR検査の王様(ゴールドスタンダード)と言いますが、それ以外にもLAMP法や、TMA法があります。

どれも遺伝子を増幅する事で感染をみる検査には違いなく、どれもPCR検査で間違いないのですが、RT-PCRは工程が長く複雑で、結果が出るまでに時間がかかり手間もかかります。

一方そのデメリットを改善し、検査工程を短く簡略化(一定温度で可)とする事で、より簡便に早く結果を出す事ができます。

抗原定量検査

抗原定量検査は、LAMP法とほぼ同程度の検査精度と言われていたりもします。

ただ、一般的にはPCR検査よりも一段落ち、また、必要な抗原の量も多いです。

つまり、そこそこ疑わしい人に検査をするには十分かもしれませんが、あまり疑わしくない人の一応検査する(≒スクリーニング検査)にはあまり向かなかったり、カットオフ値周辺の数値が出た場合には、PCRで再検査をした方が安全ですね。

抗原定性検査

抗原定性検査は、簡易的なキットを使う場合と、検査機器を使う場合の2種類あります。

当然検査機器を使う方が精度は高く、簡易キットで陽性になるために必要なウイルス量の10分の1で陽性を検出できますが、それでもPCR検査や抗原定量検査と比べると、必要なウイルス抗原の量が多いため、使える状況が限られてきます。

検査にかかる時間

それぞれの検査にかかる所要時間は、下の表のようになります。

検査法 所要時間
RT-PCR 2~4時間
LAMP法、TMA法など 1時間
抗原定量 30分
抗原定性 15~30分

輸送やら実施のタイミング合わせなど色々あると、PCRの検査結果が翌日になってしまうケースがほとんどなのもわかるかと思います。

検査対象者別の推奨検査・推奨検体

ちなみに、検査対象者別の推奨検査・推奨検体は下のようになります。

1.新型コロナウイルス感染症を疑う有症状者

コロナ感染が疑わしい有症状者(症状が新型コロナに特徴的、または濃厚接触者が有症状となった場合など医師が疑う場合)については、PCR検査・抗原定量検査・抗原定性検査のどれも可能になる事が多いですが、例外もあるので以下の点には留意して選択します。

留意点
  • PCR検査:唾液検体の場合、発症から10日目以降は検出性能が低い。
  • 抗原定量検査:唾液検体の場合、発症から10日目以降は検出性能が低い。
  • 抗原定性検査:唾液検体は用いることができません。鼻咽頭・鼻腔検体では、発症初日から用いることができますが、10日目以降で陰性の場合に、臨床像から必要に応じて核酸検出検査や抗原定量検査を行うことが推奨されます。

2.濃厚接触者

濃厚接触者抗原定性検査は、無症状者への検査は適しません。

3.インフルエンザ等の他疾患との鑑別が必要な場合

インフルエンザ流行期には季節性インフルエンザと新型コロナの両方の検査を行うことを推奨されています。

また、重症化の兆候があり緊急性を要すると考えられる患者においては、新型コロナを含めた複数の病原体の迅速検査を行い最適な診療を早い段階から可能とすることを考慮すると、日本感染症学会から提唱されています。

4 無症状者の検査

無症状者に医師が検査を必要と判断して検査を実施する場合は、原則PCR検査あるいは抗原定量検査を行うことになります。

抗原定性検査を無症状者に対する確定診断のために使用することは推奨されません。

ただし、PCR検査などが難しいが、感染拡大が著しく重症化率が高い集団である、と言ったような、特定の条件下では容認される事もあります。

しかしその場合、陰性であっても感染対策は続ける必要がありますし、陽性であった場合には概ねPCR検査にて再検査を行うことになります。

表にすると下のようになります。前回の図と一緒です。

参考:厚生労働省(2021年4月時点)新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識より

内容としては盛りだくさんでした。お疲れ様でした。

まとめ

まとめです。

  • PCR検査にも3種類あって、本家本元のPCR検査であるリアルタイムRT-PCR法の他に、工程や手間を簡略化したLAMP法やTMA法がある。
  • 抗原定量はPCRよりも精度は落ちるが、早く結果を出す事ができ、それなりに精度も保たれる。
  • 抗原定性は、簡単に行う事ができ、結果も早く知る事ができるが、精度は低く、制限も多い。
  • 検査を実施する患者さん(被験者)の状態によって、適切な検査方法や検体採取法が異なるので注意。

でした。

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