最終更新日:2023年7月13日

凍結肩(frozen shoulder)・拘縮肩

凍結肩・拘縮肩とは

肩関節周囲疾患、外傷などの明らかな原因がなく肩関節の痛みと可動域制限をきたす病態が凍結肩と定義されています。

肩関節周囲炎などの炎症性疾患や骨折などの外傷後に肩関節を十分に動かすことができない状態が長期間持続することで肩関節周囲の軟部組織が癒着して滑走不全が起こったり、筋腱、関節包の伸張性が低下して肩関節の可動域制限をきたしている病態は拘縮肩と呼ばれています。

いずれも中高年に発症することが多い病態です。

肩関節の可動域制限があれば拘縮肩、拘縮肩のうち、原因不明なものは凍結肩と呼ばれます。

(ここでの可動域制限とは、自動運動ではなく、他動運動での可動域です。他者に動かしてもらっても肩関節の拘縮から可動域に制限がある場合を指しています。)

発生頻度は全体の2~5%、糖尿病患者では20%ほどに発症すると報告されています。

原因

凍結肩の場合

基本的に原因不明です。

拘縮肩の場合

肩周囲組織の癒着、伸張性が低下することで可動域制限が起こると考えられています。

肩周囲組織とは

肩周囲には肩甲上腕関節、肩鎖関節、胸鎖関節などの関節が存在するほか、真の関節構造を持たない機能的関節として肩甲胸郭関節、第2肩関節(肩峰下滑液包:SAB)が存在します。

肩の腱板は、肩関節(肩甲上腕関節)周囲を取り囲むように存在する4つの筋腱の総称で、前方に肩甲下筋、上方に棘上筋、棘下筋、後方に小円筋が存在し、それぞれが肩甲骨と上腕骨を3次元的に連結することで肩関節の安定性、可動性に重要な役割をしています。

また、腱板のさらに深層には関節包、関節唇が存在し、円滑な関節運動、肩関節の脱臼防止に寄与しています。

肩関節を構成する腱板、関節包、関節唇、関節軟骨、骨のみならず、肩関節の動きをサポートする滑液包、アウターマッスルも肩の可動域には影響しています。

肩関節の可動域に影響が出る疾患

  • 肩周囲の骨折
    痛みのため自動運動、他動運動ともに困難になります。
  • 肩腱板断裂
    高齢者では痛みがないことも多いです。ご自身で挙上を保持することは困難ですが、サポートがある場合は可能です。
  • 頚椎神経根障害(C5)
    上腕二頭筋筋力低下、知覚障害がみられます。また、サポートがある場合、挙上は可能ですが、ご自身で行うことは難しくなります。
  • 神経痛性筋萎縮症
    肩甲、上腕部の筋萎縮が特徴です。自動運動は弱くなるが他動運動は可能となります。(中年以降の男性に多く、ウイルス感染、外傷、スポーツなどが誘因と報告されています。)
  • 肩関節以外の関節、筋肉の拘縮
    上位胸椎、胸鎖、胸肋関節、肩甲骨周囲筋、大胸筋などが原因で、サポートがあっても、挙上は困難になります。

炎症、拘縮の悪循環

炎症 → 痛みのために動かさない → 関節が硬くなる(拘縮)→ 炎症がさらに起こる」といった悪循環が体内で起こっていると考えられています。

また、糖尿病、甲状腺疾患などが基礎疾患にあると予後不良になりやすく(拘縮の再発が起こりやすい)、喫煙とも因果関係があるという報告があります。

症状

慢性的に肩関節の可動域制限がある状態(拘縮)で腕が上がらない、挙上できないといった症状がみられます。

可動域は自動運動、他動運動ともに制限されることが多いです。

拘縮角度までは痛みがなく、それを超える角度では痛みが出るケースが多いです。

長期化すると、痛みは気にならないが可動域に強い制限が起こっているケースもあります。

日常生活動作への影響

以下がよく聞く症状です。

  • 洗濯物を干せない
  • 手が頭に届かずにシャンプーできない
  • エプロンの紐が結べない、ズボンの後ろポケットを使用できない など

ポイントは、痛くてできないわけではなく、拘縮で動かせないのです。

診断

肩関節の可動域制限があれば拘縮肩、可動域制限がある拘縮肩のうち、原因不明なものは凍結肩と診断されます。

厳密には、肩屈曲、外転、外旋、内旋(結滞)を計測し、診断基準を参照して診断します。

診断基準

「肩屈曲100°未満、外旋10°未満、内旋(結滞)L5未満のもの」または、「肩屈曲90°以下、外転90°以下、外旋10°以下、内旋(結滞)L3以下」が診断基準となります。

他の肩関節疾患との診断上の違い

他の肩関節疾患との診断上の違いは、他動運動でも可動域に制限がある点です。

拘縮肩・凍結肩では以下の症状がみられます。

  • 他動的な肩外転で、上腕骨と肩甲骨の分離が悪く、初期から肩甲骨が上方回旋してしまう。
  • 他動的な肩屈曲内旋で、可動域の途中で硬く止まってしまう。

「痛みはあるけど自動で動かせる」、「他動運動なら動く」などとは根本的に違う病態です。

セルフチェック

  • 肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)になった後に痛みはほぼ消失したが、なんとなく肩関節の可動域が悪くなった感じがある
  • バンザイをする際にしっかりと真上まで上肢を挙上できない

このような症状がある方は高齢者には非常に多く、診断基準からは拘縮とは言えませんが軽い拘縮様症状といえます。

肩の挙上が制限されると胸腰椎に過度の負担がかかり、腰痛の原因などに繋がっているケースもよくあります。(肩が上がらない分、腰を反ることで対応していることが多いです。)

悪化しないようにリハビリテーションや、セルフエクササイズなどを行うことをお勧めします。

治療

保存的治療

投薬

痛みの状況によって、消炎鎮痛薬、外用薬などの処方を行います。

注射

痛み、軟部組織の滑走性の低下などに対して適宜行います。

エコーガイド下に癒着部を剥離するように注射を行ったり(ハイドロリリース、プロロセラピー)、肩関節周囲炎の合併例ではステロイド、ヒアルロン酸の注射なども行います。

リハビリテーション、物理療法

痛みに合わせて可動域訓練、ストレッチなどを継続的に行います。

当院では、肩関節拘縮に対して筋緊張が強い部分の緩和目的に圧力波(衝撃波の一種)を使用し、他動的なストレッチ、徒手療法を行い、自宅での自動運動、ストレッチ指導などを行なっています。

圧力波は、軟部組織の拘縮緩和に効果があると最近報告され、期待されている治療方法の1つです。

リハビリテーションについてご案内はこちらから

サイレントマニプレーション

エコーガイド下に頚椎神経根ブロックで麻酔し、非観血的に関節受動術を行う方法です。

骨粗鬆症がある場合には骨折のリスクがあったり、糖尿病のコントロールが悪い場合には麻酔手技自体が困難となる場合があります。

麻酔後は上肢の運動、知覚が麻痺するため、自動車、自転車の運転が困難となるため来院方法には注意が必要です。

サイレントマニプレーションに関しては、施行可能な施設に紹介させていただきます。

また、サイレントマニプレーション後は頻回にリハビリ介入することが必要となります。

外科治療

全身麻酔で関節鏡視下に関節包切離術などの手術を行う場合があります。

(サイレントマニプレーションが行われるようになり、手術になるケースは減少しています。)

当院でできること

  • 身体所見、レントゲン、エコー検査からの診断
  • 投薬、注射、補装具を使用した保存的治療
  • 専門スタッフによるリハビリテーション
  • 手術術後の回復リハビリテーション

診断から治療、その後のリハビリまで患者さんの症状に合わせて対応しておりますので、ご相談下さい。

当院でできないこと

当院では、MRIでの精査、手術加療はできません。

必要であれば専門外来に紹介させていただきます。

お話を伺ったのは・・・
岡部 高弘 (おかべ  たかひろ ) 先生
ドクターのクリニック詳細情報
新中野整形・リハビリテーションクリニック
整形外科、リハビリテーション科

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