最終更新日:2023年10月26日
発達性協調運動症(DCD)
発達性協調運動症とは
発達性協調運動症、または発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder; DCD)は、DSM-5のなかでチック症・トゥレット症や常同運動症と同じ運動症群に含まれています。
いわゆる「不器用」のことであり、人口の5~6%程と報告されています。
最初の医学論文の報告としては、1937年のOrtonによって“significance of clumsiness”と表現されていました。
その後も種々の名称で表現されてきましたが、1994年にロンドンの国際会議でのコンセンサスとしてまとめられ、現在に至っています。
しかし、診断する役割の医師はこの発達性協調運動症の概念を知らないことが多く、「不器用だから」ということで周囲の大人が気づかないうちにこども自身が深く悩んでいるケースもみられます。
たとえば、次のような例です。
“9歳の男の子、靴をはくのも困難で、母は食べ物を切ってあげたり、髪をあらってあげたりする必要がある。
ひとりでこれらをこなすことが難しいからである。
自転車の乗り方も習得できない、公園に友達といくことができない。
チームスポーツをしようと試みるが、ミスをするのでパスをもらえない。
これにより彼は、疎外感や劣等感を感じるようになり、以後参加しないようになった。
両親は彼が孤立してひきこもるのではないかと心配している。
学校の先生からは性格は明るくてよいが、字を書くことがゆっくりであり、下手である。
宿題もこなせないことも多くなり、進級も懸念されている。
両親が次第に関わらざるを得なくなっている・・・”
発達性協調運動症の原因
それでは、発達性協調運動症の原因は何でしょうか。
脳のCTやMRI写真をみても大きな異常はないのですが、早産のこども達に多いとの報告があります。
このことから、明らかな脳性麻痺までには至らないものの脳内に微小な神経障害があり、「不器用さ」と関連しているのではないかという意見があります。
また運動を滑らかに行う調整を行っている小脳が「不器用さ」の原因にかかわっているのではないかとも考えられています。
そのほか、約半数がADHD(注意欠如・多動症または注意欠如・多動性障害)の診断基準に合致するとの報告や、学習障害と合併しやすいとの報告もあります。
発達性協調運動症の症状
発達性協調運動症の具体的な症状として、幼少期の運動発達の遅れ(はいはい、歩行開始の遅れ)、箸やはさみが使えない、スポーツが苦手、よく物を落とす、書字が苦手・汚いなどが挙げられます。
このように運動の協調が必要とされる活動がきっかけで、日常活動や学校生活に支障が生じているのかどうかを確認することが必要です。
そのため、医師や理学療法士や作業療法士といった専門職だけでなく、学校の先生など複数の意見を聞くことが必要です。
なお、もう既に脳性麻痺や筋ジストロフィーなどの筋肉の病気など身体的な疾患の診断を受けているお子さんでは、この発達性協調運動症という診断を付加することはありません。
地域によっては5歳時健診のなかで、以下の項目を利用して発達性協調運動症に関するスクリーニングを行っていることもあります。
これらは、神経学的微細兆候Soft neurological signsと呼ばれています。
発達性協調運動症に関するスクリーニング
- ①開口手伸展現象 上肢を前ならえのように伸ばし、手首だけを脱力させた状態で、開口・閉眼・舌出しの動作を同時にしてもらい、指や手首の伸展動作のような動きがあるかどうかを確認。8歳以上でみられるときには注意。
- ②前腕回内・回外運動 8歳では肘を動かさなくても可能になります。9歳以降では注意。
- ③指鼻試験 5歳以降では眼を閉じても可能になります。6歳以降で開眼でないとできないと注意。
- ④指対立試験 9歳以降に対立運動や指から指への移行が円滑でないと注意(反対の手も一緒に動くことは10歳くらいまでは認められる)。
- ⑤閉眼起立、立位での安定性 閉眼立位で7歳以上は安定している。側部から押してもすぐに体の揺れのみでもどる。
- ⑥片足立ち・片足跳び 7歳以上で20秒以上は片足立ちが可能。けんけんは、得意な足で、5歳で10回、6歳で12回、7歳以上では20回以上が可能。
- ⑦直線歩行 7歳以上は継足で20歩可能。9歳以降は、直線からそれることはなくなってくる。
発達性協調運動症のこどもとの向き合い方
それでは、どのようなことに注意して向き合っていけばよいのでしょうか。
以前は、運動の困難さは成人にむけて改善していくため介入不要とも考えられていましたが、様々な研究により思春期や成人期まで継続していることが分かりました。
また感情面、肥満などの健康面でのリスク因子になっていることも判明し、ヨーロッパでのガイドラインでは、発達性協調運動症と診断されたこども全てに介入することが推奨されています。
医師、作業療法士や理学療法士などの専門職により両親や教師が「不器用な」こども達にポジティブなサポート役をできるように働きかけること、こどもに対しては成長した際に、苦手なことを補完するような対策を提案し利用できるようにしていくことが挙げられます。
3~4歳児での積極的(予防的)な介入は推奨されておらず、5歳までは3カ月以上の期間を空けて発達状況の繰り返し評価をしていき、5歳以降は課題(認知)志向型の介入を勧めていくことが推奨されています。
具体的な事例として、日本では多辺田らがまとめた「しまはちチャレンジグループ」の試みが報告されています(作業療法 2015年)。
ぜひ一度読んでみてください。
【報告書】自閉症スペクトラム障害児の不器用さに対する認知指向型・家族参加型グループリハビリテーションの試み(PDF:1.78MB)
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