SGLT2阻害薬によるCKD及びDKDの治療法

日本の慢性透析療法の現況(2018年12月31日現在)

2018年の透析導入患者の原疾患で最も多いのは糖尿病性腎症で43.2%、次いで慢性糸球体腎炎の16.6%、腎硬化症の14.2%であり、原疾患不明は12.8%であった。

導入患者の原疾患は、1998年に慢性糸球体腎炎に代わって、糖尿病性腎症が原疾患の第1位になって以来、一貫して増加していたが,近年はほぼ横ばいで推移している。

慢性糸球体腎炎の割合は直線的に低下している。

一方、腎硬化症および原疾患不明の割合は年々上昇しています。

町田市の人工透析患者の状況

2016年度から2019年度にかけて、人工透析患者数は減少傾向にあります(図1)。

2019年度の人工透析患者を患者数割合で見ると 0.5%とごく少数ですが、医療費割合で見ると全体の7.5%を占めており、患者一人当たり医療費も約550万円と非常に高額になっています(図2)。

また、新規人工透析導入患者の93.3%は糖尿病を罹患しており、糖尿病の重症化が原因の人工透析導入が多いと考えられます。

日本人DKD患者100例の初診から透析に移行するまでを検証した試験では、糖尿病性腎症は、早期に微量アルブミン尿が確認され、その後、顕性アルブミン尿が検出されると同時に、腎機能が低下し、末期腎不全となり、人工透析が必要になります。

腎硬化症は、アルブミン尿が検出される前から腎機能が低下しており、微量アルブミン尿、顕性アルブミン尿が検出され、末期腎不全となり、人口透析が必要になります。

健常人、通常時の腎血行動態

近位尿細管では、SGLT2は発現しているが少なく、適度にNa+/グルコースの再吸収を行っており、Na+/グルコースは適度に体内に取り込まれています。

又、遠位尿細管では、緻密班がNa+濃度を感知し、輸入細動脈が適度に収縮拡張することで糸球体内圧は調整され、腎血流量を正常に保たれ、蛋白・アルブミン尿も殆ど検出されません。

高血糖状態での腎血行動態

近位尿細管では、SGLT2が発現・増加し、体内にNa+/グルコースが体内に取り込まれる事で、高血糖状態が維持されてしまいます。

遠位尿細管では、緻密班でNa+濃度の低下を感知し、輸入細動脈を拡張させる事で糸球体に流れ込む血流量が増加しますので、腎灌流量が増加する事で、糸球体内圧が高まり、GFRが上昇し、蛋白・アルブミン尿が糸球体から染み出し、蛋白・アルブミンが検出されるようになります。

SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンによる腎血行動態への影響

SGLT2を阻害する事で、Na+/グルコースが体内に取り込まれるのを抑制し、尿中にNa+/グルコース量を増加させる事で、高血糖状態を解除します。

遠位尿細管のNa+が増加する事で、緻密班がNa+増加を感知し、輸入細動脈を収縮させます。

又、輸入細動脈が調節される事で、糸球体への腎血流量が減少し、過剰な糸球体内圧が低下します。同時にGFR・蛋白・アルブミン尿が正常化されます。

2型糖尿病患者さんを対象に心血管イベントの抑制効果、生命予後への影響を検証したSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)の試験では、顕性アルブミン尿が検出されていた患者さんの腎機能低下速度(eGFR)を、腎機能低下速度を改善しており、通常時の経年低下速度に近くまで改善していました。

DKD(糖尿病性腎症)への糖尿病治療薬のエビデンスは、近年発売された薬剤ほど生命予後に与える影響は良いと言われています。

特にSGLT2阻害薬は、適応が糖尿病だけでなく多岐にわたる為、注目されている薬剤です。

薬剤費用について

昨今の年金問題、物価上昇など、経済的な問題もございます。

当院では、SGLT2阻害薬の配合剤も処方できますので、薬剤にかかる費用を節約する事も重要と考えています。

例えば、SGLT2阻害薬ジャディアンス10mg+DPP4阻害薬トラゼンタ5mg=薬価は310円になりますが、配合剤のトラディアンスAPに切り替える事で薬価は60円安く抑えられます。

トラディアンスBPだと更に薬価で100円安く抑える事ができます。

その他

当院で使用しているSGLT2阻害薬の薬価と1ヶ月の自己負担額(3割)について

近年、CKD(慢性腎臓病)に対して、SGLT2阻害薬(フォシーガ10mg)が使用できるようになりました。

又、未承認ではありますが、他のSGLT2阻害薬(ジャディアンス10mg)も2024年に適応が追加される予定です。

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