いつまでも“せき”だけが続く
…これってホントに風邪?

風邪やインフルエンザ、新型コロナにかかった場合など、発熱や頭痛は治ったのに“せき”だけがいつまでも残る……こんな経験はありませんか。

諸症状の中で比較的大きなアクションを伴うため、印象に残りやすいのでしょうか。

目安となる期間は「3週間」

Q. 風邪の諸症状の中で、「せき」は比較的長引きやすい印象があります。

A. そうですね。「風邪は治ったけど、せきが続いている」とおっしゃる患者さんは少なくありません。

日本呼吸器学会がまとめたガイドライン「咳嗽・喀痰(がいそう・かくたん)の診療ガイドライン2019」では、“3週間以上”せきが続くようなら、風邪、感染症以外の病気を疑うべきだとしています。

Q. なぜ、3週間が目安になるのでしょう? その理由は?

A. 風邪のせきというのは、長引いたとしても大体平均すると18〜21日で治まるというデータがあるので、急性のせきは3週間が目安と言われています。

Q. ここで問題にしているせきって、どのようなタイプがあるのでしょう?

A. あまりたんが絡まないドライなせきや、たんを伴うウエットなせきがあります。

より正確に診断するためには、「生活背景の聞き取り」が求められるところです。

具体的には、アレルギーや喫煙習慣の有無などですね。

「せきが続く期間」だけを診ていても、正確な診断は下せません。

せきという結果は一つでも、原因はさまざまに考えられる

Q. せきが長引いている場合、考えられる病気は?

A. まさに多彩です。ちなみに、せきのことを医学的には「咳嗽(がいそう)」と言います。

そのうえで、主だったせきの続く病気には、以下のようなものがあります。

  • 感染性咳嗽:感染症(風邪)によって起こるせき
  • 感染後咳嗽:菌やウイルスが死滅していて、風邪自体は治っているにも関わらず残るせき
  • アレルギー咳嗽(アトピー咳嗽):何らかのアレルギー反応によるせき
  • せきぜんそく:ヒューヒューやゼイゼイといった、呼吸困難を伴わないせき
  • 後鼻漏(こうびろう)症候群:鼻水が喉の奥に落ちることによって起こるせき
  • 逆流性食道炎:胃酸が逆流したことによって起こるせき
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD):主に喫煙習慣により生じる肺疾患

そのほか、肺炎や肺がん、肺結核などの重病が隠れていることもあります。

また、服用中の薬の副作用によるせきなども考えられます。

Q. それぞれの鑑別は、どのようにおこなっているのですか?

A. 可能性は多彩ですから、まずは入念な聞き取りをおこなって絞りこんでいく。それに尽きます。

そのうえで、例えばウイルスや菌が関係していそうなら、血液検査をおこないます。

我々医師が常に念頭に置いているのは、肺がんと結核の可能性です。

死に直結しかねない病気ですから、胸部X線で調べます。

また、ぜんそくが疑われる場合には、肺機能検査をおこないます。

入口を間違うと、いつまでも出口へたどり着けない

Q. 長引くせきは、どのように予防すればよいのでしょう?

A. 上述したほとんどの病気には、それぞれの治療方法が確立しています。

それぞれの予防方法は異なるのですが、共通していえるのは「喫煙習慣は諸害の元」ということです。

肺がんやCOPDといった固有の病気はもちろん、炎症や感染を起こしやすいことも知られています。

禁煙は、有効な予防・治療方法です。

Q. せき止めの市販薬に頼っても大丈夫でしょうか?

A. 服用してみて“効果がある”のなら否定はしません。

ただし、いつまでたっても“効かない”のであれば、見当違いのお薬を服用している可能性がありますので、呼吸器内科を受診されてはどうでしょうか?

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