最終更新日：2023年11月2日
知的障害（知的発達症）
知的障害（知的発達症）とは、発達期（おおむね18歳未満）の間に発症した知的機能と適応機能の両面での機能不全の状態をいいます。
時代とともにその名称は変化しており、精神遅滞、知的障害、知的発達障害、知的能力障害という診断名も同義です。
幼少の場合には発達遅滞や発達遅延といった診断名で説明されることもあります。
神経発達症のなかで知的発達症は最も多いといわれており、人口のなかで約１％を占めます。
知的発達症はひとつの診断名として考えるより、その重症度によって症状が大きく異なるため、知的水準の程度と合わせて説明することが将来の支援の内容を考えるうえでとても大切です。
その分類は、現在は軽度、中等度、重度、最重度の４つに分けて説明されることが多くなっています。
5歳未満の幼少期には発達検査を、年長児以降では知能検査を行って算出した発達指数（DQ）・知能指数（IQ）を参考に、日常生活能力や集団生活での適応能力等を評価し、重症度についても併せて医師が診断します。
症状
最初に気づかれる症状としては、知的能力面で重い知的発達症の場合、言葉の遅れや運動発達の遅れが多く、1歳半を過ぎてもママ、パパなどの言葉がない、一人で座れない、歩けないといった主訴で来院されます。
そのほか、けいれん発作が最初の症状で、あとから知的発達症と診断される場合や、こども時代の交通事故や脳炎・脳症などの後天的な病気の後遺症として診断される場合もあります。
このように、中等度から重度の知的発達症では、脳波検査やMRI検査などで脳に何らかの原因がみつかる場合が多く、その原因となる疾患を正しく理解すること、てんかんなどの合併症を早期に発見して治療につなげていくことが大切です。
一方、知的能力面で軽い知的発達症の場合では、幼少期には発達の遅れには気づかれず、小学校入ってから勉強の遅れや友人関係の困難、不登校が主訴となり、はじめて気づかれることが多いです。
この場合、医療機関で精密検査をしても脳に明らかな検査異常がないことも多く、ご本人とご家族への知的発達症に関する丁寧な説明と、ご本人の年齢に合わせた環境調整と生活・教育支援が中心となります。
なかにはご本人または両親が事実として受け入れることができず、成人後にご兄弟・親戚とともに相談に来られる例もあります。
この場合でも、支援の開始が遅すぎるということは決してありません。
知的発達症を有するご本人自身の長く豊かな人生のためにも、ともに暮らすご家族が長く安心して過ごせるためにも、理解・支援してくれる人たちと繋がっていくことはとても大切です。
特に医療面では小児科だけでなく、成人後も受診可能な、かかりつけ医をつくり定期的に健診を受けることが大切です。
知的発達症の方々への支援
歴史を振り返ると、知的発達症を有する方々が社会のなかで差別、暴力、搾取の対象になっていたという事実があります。
そのため、保護・自立のための支援体制が必要のために法律（児童福祉法や現在の知的障害者福祉法）がつくられたのが、知的発達症の方々への支援の始まりです。
その後、東京都では1967年（昭和42年）に愛の手帳（東京都療育手帳）の制度が始まり、知的発達症のある方々に対する社会の理解と協力を深めるために児童相談所や更生相談所等で手帳交付のための相談・判定が行われ、学校教育でも特別支援教育が発展してきました。
さらに、障害者総合支援法が新たに施行され、保護の対象から権利の主体者として考えられるように社会の考え方も徐々に変化し、ご本人のニーズにあった支援サービスが利用できるようになってきています。
お子さんやご家族が知的発達症ではないかとご心配がある場合には、一人で悩まず抱え込まずまずは現状を専門家と共有し、相談を始めてみましょう。
- お話を伺ったのは・・・
- 相崎 貢一 （あいざき こういち ） 先生
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シャーロットこども発達クリニック
神経小児科、小児科、児童精神科
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